国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例

今日は、令和3年分の所得税申告から改正となった項目についての紹介です。

資産価値が高い国外中古建物を短期間で償却し、他の所得と損益通算をして税率を抑えつつ、不動産売却時の税率(長期譲渡ならば約20%)との税率差による個人富裕層向けの節税スキームを塞ぐ手当てがされました。

国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例

国外不動産所得に損失が生じた場合は、その損失額のうち、国外中古建物の減価償却費相当部分については、損失が生じなかったものとみなされることになりました。国外不動産が複数ある場合は、他の国外不動産から生ずる所得と損益通算することはできますが、国内不動産から生ずる不動産所得とのいわゆる所得内通算や不動産所得以外の給与所得や事業所得等との損益通算ができなるというものです。改正法の施行日前に取得している建物も対象になっていますので注意が必要です。

この対象となる国外中古建物は、不動産所得の金額の計算上、その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際の耐用年数を、以下の方法により算定しているものをいいます。

  • 法定耐用年数の全部を経過した資産(法定耐用年数×20%)
  • 法定耐用年数の一部を経過した資産(法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%)
  • 一定の書類添付がない見積法(以後の使用可能期間の年数を耐用年数とする方法)

例えば、数値を入れると、

 国外不動産の収入100 - 必要経費120(うち減価償却費30) = 不動産所得▲20

となり、従来、損失20は他の所得と通算できたところ、令和3年分より、この損失20については、国外不動産の減価償却費相当30までは生じなかったものとされるため、国外不動産所得は0となって、他の所得との損益通算ができなくなります。

 

なお、この国外中古建物を譲渡した場合における取得費は、生じなかったものとされた上記の20の部分は償却費の累計額からは除かれることになり、譲渡所得の金額は少なくなります。