不動産所得の事業的規模

確定申告に向けてそろそろ準備を開始される方も多いのではないかと思います。今回から所得税の確定申告に向けてポイントを少しづつまとめていきたいと思います。

不動産所得の事業的規模

不動産所得においては、その事業が事業的規模と認められるかは、非常に重要です。事業的規模であると認められると、以下のような、様々な税制優遇を受けることができます。

税制優遇の内容事業的規模事業的規模以外
賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失その全額を必要経費に算入その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入
賃貸料等の回収不能による貸倒損失回収不能となった年分の必要経費に算入収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直し
青色申告の事業専従者給与または白色申告の事業専従者控除適用あり(配偶者控除や扶養控除はなし)適用なし
青色申告特別控除一定の要件を満たすことにより55万円(電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は+10万円の65万円)の控除控除額は最高10万円

では、実際に、事業的規模に該当するかどうかをどうやって判定するのかですが、下記の所得税基本通達26-9では、社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより実質的に判定することを原則としています。

しかし、実質的に判定せよとはいっても、賃貸料収入、貸付資産の管理状況等、営利性・有償性、反復・継続性、自己の危険と計算における事業遂行性、精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無などを総合勘案といった採決事例等にあてはめるのは、なかなか難しいと思われます。そこで、通常、実務では、いわゆる「5棟10室基準」と呼ばれる形式基準で判定するケースが多いと思います。

独立家屋の貸付けであれば、おおむね5棟以上、貸間・アパート等であれば、独立した室数がおおむね10以上あれば事業的規模となります。なお、駐車場などの土地の貸付けがあれば、5件で1室分として判定します。貸室8室と貸地10件あれば、事業的規模となります。また、空室は実際に賃貸可能で借主募集中の物件であれば、基本的には含めて差し支えありません。

(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。  
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。